地縁に助けられながら、心に残る神社を守り続ける

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地縁に助けられながら、心に残る神社を守り続ける

 

紙祖神岡太神社・大瀧神社の宮司である上島晃智さん。上島家は代々、宮司として同神社に仕え、上島さんは現在14代目。教育機関で教鞭をとりながら宮司としての役目も果たしている。

「生まれた時から神社が暮らしであり、日常です。父親から宮司を引き継いだ時は不安もありましたが、地元の方や地縁に助けられ、教えていただいてきましたので、不安はそれほど大きくはなかったです」

子どもの頃から神社の手伝いは当たり前、休日が休日ではなく、子どもなら心躍る祭りの時でさえそれは変わらない。かといってそれが苦痛というわけではなく、それもまた暮らしの一部であり、大切な仕事だと納得している。

地元の人たちにとっての神社も上島さん同様、暮らしの一部である。今なお、紙漉きを伝えたとされる川上御前を敬い、紙漉きの伝統と技術を守り継承していることでも、その存在の大きさがわかる。特に祭りに関しては、地元の人たちの熱意と強固な絆を実感するという。

「祭りを支えているのは昔も今も地元の方々で、支える=守るだと思っています。祭りを行う意味は二つ、神様に礼を尽くし感謝すること、そして神様との交友を深めることです。2020年はコロナ禍とあって交友を深めることを控え簡素化しましたが、その内容も地元の方が主体となって内容を決めました。簡素化とはいえ、神事を執り行えたことに感謝していますし、来年は例年通りの祭りにしたいと皆さんが強く願っています」

ふだんから地元で親しまれ、いざとなれば“地縁”で支え、守ってきた紙祖神岡太神社・大瀧神社。近年では観光地、越前和紙の里として人気が高まり、イベント時には大勢の人が訪れるようにもなった。

「ただ漠然と見て回るだけの散策ではなく、心に残る旅をしていただきたい。その点、ここは複雑な屋根形態の社殿が見どころですし、山頂も含めて史跡として周遊もできます。昔から地域に根付いているもの、守られているものを見ていただくことで、観光された方の心に残る場所になれば嬉しいですね。ちなみに私の心にあるのは、山頂にある大きな杉の木を見上げた時の風景……素晴らしいですよ」

心に深く残る風景や事象は誰かに伝えたくなり、共有したくなる。共有が後世へと伝わり、自分の知らない誰かの心にも残されていく。その繰り返しの中にある、自然の恵みと大いなる知恵への普遍の感動、感謝こそ、この神社や紙漉きの技がこの地に生きる人々によって守られ続けてきた根源にほかならない。

 

 

文:笹島美由起

Text / Miyuki Sasajima

住所
越前市大滝町13-1
電話
0778-42-1151(社務所)